中山研究室
指導教員 | 中山裕道 教授 |
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テーマ | 位相幾何学に関する研究 |
研究内容
天気予報を見ていて、「来週の週末は晴れます」と言われてもそのまま信じる人はいないでしょう。僕の場合、3日先の天気予報も信じる気になれません。
天気予報が当たりにくいのには理論的な裏付けがあって、それは天気がカオス現象だからとされています。ここでカオス現象とは。初期値を少し変えることで、将来大きく状態が変わる現象をいいます。天気予報をテレビで見ているとしましょう。最近の放送では、雲の衛星写真が時間とともに変化していくさまがよく流されています。最初の配置がちょっとしか違わないのに、数日後には、 似ても似つかない雲の配置になることは容易に想像できます。これが、カオス現象です。
カオス現象という言葉は現在よく耳にしますが、実は、カオス現象の研究は昔から研究されてきた力学系理論という研究分野の一部です。力学系理論はおよそ100年前に確立した分野で、天体の運動に由来しています。3つの星が互いに万有引力に引かれ運動しているとしましょう。方程式自身は高校レベルの物理で簡単にあらわすことができますが、この方程式が実は難しくて解けないのです。そこで、解けないながらも、「天体が衝突するかどうか」という幾何学的な性質のみに着目しようと考えられたのが、力学系理論です。位相幾何学自身もこれを機に始まりました。
僕が目指してきたテーマは、この力学系理論の中のゴッドシャーク予想と呼ばれる予想問題を解くことです。 ゴッドシャーク予想とは「3次元球面に極小流はあるか」という問題で、博士課程の学生時代に、この問題を解き始めました。未だに解けていないし、ひょっとしたら、糸口さえも見つけていないのかもしれません。試験だとしたらとてつもない長い試験時間です。実は、この問題の解決を世界中の研究者がねらっていて、出題から70年以上たった現在でも、未だに答えがでていません。この点で、僕のこれまでの論文は、失敗した挑戦の残念報告ともいえます。しかし、そういう世界中の残念報告を足がかりに、世界中でまた挑戦が行われるという気の長い旅があり、それを僕もしているのです。
参考文献
- Surface diffeomorphisms with connected but not path-connected minimal sets containing arcs H. Nakayama, J. of Math. Soc. Japan 69(1) 227-239 2017年1月
- Continua as minimal sets of homeomorphisms of S2 Enseign. Math., 57(3-4) 373-392, 2011年10月
研究者情報
教授:中山 裕道 | |
学位 | 博士(理学) |
所属学会 | 日本数学会 |
研究分野 | 位相幾何学、力学系理論 |