エネルギー素子工学研究室
指導教員 | 石河泰明 准教授 |
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テーマ | 1.室内用太陽電池の開発 2.長期信頼性のある太陽電池の実現に向けた劣化検知技術の開発 3.環境に豊富にある半導体を利用した高効率熱電材料の開発 4.低消費電力を実現する酸化物半導体の薄膜トランジスタとその応用 |
研究内容
様々なエネルギーが、我々の身の回りに溢れています。外に出れば太陽があり、光や熱エネルギーがあります。また、モノが動けば振動や熱が発生します。これらエネルギーを、効率良く利用し易いエネルギーに変換し、我々の社会に循環させることは、持続可能社会の発展に大きく寄与すると期待されています。また、駆動時に消費するエネルギーが少ない素子・装置の発展も、エネルギーの有効利用に役立ちます。
本研究室では、創エネルギー・省エネルギー素子に焦点を当て、その可能性を探索し、未来社会をより豊かにする素子を創り出すことを目的としています。
室内用太陽電池の開発
IoTなど様々な小型デバイスやセンサが今後普及していくと期待されています。これら装置の駆動電源はバッテリーも考えられますが、多くのデバイスへの展開を考えると、その場での環境発電(エネルギーハーベスティング)が重要となってきます。
光を電気に変える場合、従来のSi太陽電池は屋外では非常に効率よく光電変換することができます。一方、室内光のように微弱な光になると、そのデバイス駆動メカニズムから変換効率が著しく低下してしまい、室内で利用できません。つまり、室内光のような環境でも効果的に電力供給できる光電変換デバイスが必要となってきます。本課題では、室内光でも効果的に発電できる構造を有した塗布型太陽電池としてペロブスカイト型太陽電池に注目し、室内光でも効率良く発電する材料および素子構造の開発を行います。
長期信頼性のある太陽電池の実現に向けた劣化検知技術の開発
屋外に設置されている太陽電池の普及は世界規模で進んでいます。日本でも全電力の7%程度を賄うまでに成長してきており、基幹電源になりつつあります。一方、電力の安定供給においては、太陽光による変動ではない、太陽電池の劣化等による出力低下は避けなければならず、長期信頼性の担保された太陽電池の開発は必要不可欠となってきています。また、屋外に設置している太陽電池の劣化状態をその場で検知できる技術も今後益々重要となってくると予想されます。
本課題では、特に次世代のSi太陽電池の劣化モードを検証することで、より信頼性の高い太陽電池の開発に繋がる施策の提言を行うと共に、屋外でも太陽電池の劣化を検知できるイメージング技術開発および深層学習法を利用した欠陥検知技術開発を行います。
環境に豊富にある半導体を利用した高効率熱電材料の開発
エネルギーハーベスティングの一つとして、熱電発電が期待されています。身の回りには様々な熱が廃棄され、ヒートアイランド現象のような事態も発生しています。工場で様々な装置が動いていますが、その装置の廃熱の処理も大きな課題です。これら熱を再度電気エネルギーに変換することが出来れば、エネルギーの利用効率は大幅に改善すると期待されています。特に200度以下の温度を高効率に電気に変換する技術が望まれています。また、これまでの熱電材料は、性能の良いものは材料が高価であり、また地殻に豊富に存在しない元素で作られてきました。
本課題では、地殻に豊富に存在している材料を用いて室温~200度の温度域の熱を効率よく電気に変換できる材料・デバイス開発を目標に、熱電材料開発を行います。半導体薄膜内にナノ構造を埋め込むと、熱が効果的に散乱することで熱伝導率が下がり、熱電性能が向上します。これまで培ってきたレーザー技術を利用したナノ構造形成技術を用い、熱電性能の向上を目指します。
低消費電力を実現する酸化物半導体の薄膜トランジスタとその応用
低消費電力化が可能な薄膜トランジスタ(TFT)に、亜鉛やガリウム、インジウムを用いた酸化物半導体が利用され始めています。これら材料系に類した酸化物半導体を利用したTFTは、ディスプレイの各ピクセルを駆動するスイッチとして注目を集めています。一方、それ以外の用途として、化学センサや生体センサの検知コンポーネントとして期待されています。
本課題では、高安定なTFTによる化学センサの更なる高性能化を行います。既に従来の酸化物半導体によるTFTの移動度の数倍の性能を持ち、かつ駆動が安定なTFTを開発していますので、本TFTを利用して化学センサの高性能化を進めています。
参考文献
- Yuki Hashima, Takanori Takahashi, Yasuaki Ishikawa, and Yukiharu Uraoka, "Development of high reliability and stability chemical sensors based on extended-gate type amorphous oxide semiconductor thin-film transistor", ACS Appl. Electron. Mater. 2 (2020) pp. 405-408.
- Dong Chung Nguyen, Yasuaki Ishikawa, Sachiko Jonai, Kyotaro Nakamura, Atsushi Masuda, and Yukiharu Uraoka, "Elucidation of delay effect by ultraviolet light irradiation during potential induced degradation tests for p-type crystalline silicon solar cells", Sol. Ener. 199 (2020) pp. 55-62.
- Itaru Raifuku, Yasuaki Ishikawa, Yu-Hsien Chiang, Pei-Ying Lin, Ming-Hsien Li, Yukiharu Uraoka, and Peter Chen , "Segregation-free bromine-doped perovskite solar cells for IoT applications", ARC Adv. 9 (2019) pp. 32833-32838.
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- Kahori Kise, Mami N. Fujii, Juan Paolo Bermundo, Yasuaki Ishikawa, and Yukiharu Uraoka, "Self-heating suppressed structure of a-IGZO thin-film transistor", IEEE Electron Dev. Lett. 39 (2018) 1322-1325.
- Michael Paul A. Jallorina, Juan Paolo S. Bermundo, Mami N. Fujii, Yasuaki Ishikawa, Yukiharu Uraoka, "Significant mobility improvement of amorphous In-Ga-Zn-O thin-film transistors annealed in a low temperature wet ambient environment", Appl. Phys. Lett. 112 (2018) 193501 (1-5).
- Itaru Raifuku, Yasuaki Ishikawa, Tiphaine Bourgeteau, Yvan Bonnassieux, Pere Roca i Cabarrocas, and Yukiharu Uraoka, "Fabrication of perovskite solar cells using sputter-processed CH3NH3PbI3 films", Appl. Phys. Express 10 (2017) 094101.
- Shinji Araki, Yasuaki Ishikawa, Xudongfang Wang, Mutsunori Uenuma, Donghwi Cho, Seokwoo Jeon, and Yukiharu Uraoka, "Fabrication of Nanoshell-based 3D Periodic Structures by Templating Process using Solution-derived ZnO", Nanoscale Res. Lett. 12 (2017) 419.
- Hiroyuki Kanda, Abdullah Uzum, Hitoshi Nishino, Tomokazu Umeyama, Hiroshi Imahori, Yasuaki Ishikawa, Yukiharu Uraoka, Seigo Ito, "Interface Optoelectronics Engineering for Mechanically Stacked Tandem Solar Cells Based on Perovskite and Silicon", ACS Appl. Mater. Interfaces 8 (2016) pp.33553-33561.
- Itaru Raifuku, Yasuaki Ishikawa, Seigo Ito, and Yukiharu Uraoka, "Characteristics of Perovskite Solar Cells Under Low-illuminance Condition", J. Phys. Chem. C 120 (2016) pp. 18986-18990.
研究者情報
准教授:石河泰明 | |
学位 | 博士(工学) |
所属学会 | 応用物理学会、日本太陽エネルギー学会、IEEE Electron Device Society |
研究分野 | 半導体工学、電子物性、薄膜デバイス |