林晋 助教
教員 | 林晋 助教 |
---|---|
テーマ | 位相幾何学、指数理論 |
研究内容
位相幾何学(トポロジー)が研究対象とする連続変形に対する不変量、特に指数と呼ばれる量に興味があります。
例として回転数を考えます。円周から複素数体上の一般線型群への連続写像(可逆行列に値を取る連続写像)を考えると、行列式をとる操作と合成することにより円周から複素平面への連続写像が定まり、その原点まわりの回転数が定義されます。一方で円周上の可逆行列値関数からフーリエ変換を経由することで、離散半直線としての自然数の集合Nの上にテープリッツ作用素と呼ばれるある作用素が定義され、その核と余核の次元の差としてフレドホルム指数と呼ばれる整数が定まります。テープリッツ作用素のフレドホルム指数は回転数と一致することがNoether指数公式として知られています。
解析的に定義される指数と位相的に定義される指数が一致することは、Atiyah-Singerによって一般に展開され、同時に位相的K理論などの理論的枠組みが整備されました。
私はこれまで主に四半面テープリッツ作用素と呼ばれるある離散四半面(例えばN×N)上の作用素の指数理論の展開やその応用に取り組んできました。四半面テープリッツ作用素は、二次元トーラス上の行列値関数からフーリエ変換を経由することで離散四半面上の作用素として定義されます。私はこれまでに、N×N上のあるクラスの四半面テープリッツ作用素のフレドホルム指数が、二次元トーラス上の可逆行列値関数をある三次元球面上に標準的に拡張したものの三次元回転数に一致することを証明しました。
また、指数理論は物性物理学のトピックであるトポロジカル絶縁体との接点があることが知られており、関連する研究も様々に行われています。例えばテープリッツ作用素の指数理論はトポロジカル絶縁体において特徴的なバルク・エッジ対応の研究に応用されました。私はこれまでに高次トポロジカル絶縁体と呼ばれる物性物理学のトピックと四半面テープリッツ作用素の指数理論の接点を指摘し、指数理論の立場からの理論提案や、物性物理学者との共同研究を行ってきました。
研究者情報
助教:林晋 | |
学位 | 博士(数理科学) |
所属学会 | 日本数学会 |
研究分野 | 位相幾何学, 指数理論 |