青山学院大学 理工学部

DEPARTMENT研究室紹介

超音波光学研究室

指導教員 長 秀雄 教授
西宮康冶朗 助教
テーマ 1.先端超音波技術を用いた機能性材料の特性評価
2.アコースティックエミッション法による材料および構造の健全性診断
3.音響試験および数値解析による弦楽器の発音機構の解明

研究内容

超音波光学研究室では、光と超音波を用いた新しい非破壊評価技術の開発に取り組んでします。社会の基盤的なインフラストラクチャーをはじめとして日本国内にある多くの設備は高経年化しています。高経年化した設備を安全に安心して使い続けるためには日常的にその状態を診断し、適切な保全を行わなければなりません。
一方、近年は炭素繊維複合材料(CFRP)などの新しい材料を従来の金属材料と組み合わせて使用するマルチマテリアル化が期待されています。マルチマテリアルでは異なる特性の材料を接合して使用することになり、接合する技術やその接合状態を評価する技術です。 

つまり、古い構造でも新しい構造でも、その構造を破壊することなく、その状態を評価するための非破壊評価技術が重要です。逆にいえば、そのような非破壊評価技術がなければ安全で安心な社会が保証できないことになります。本研究室ではそのような社会の要請に応えるべき研究を行っております。

そのほかにも楽器に関する研究をしています。楽器は複雑な構造を持っており、それぞれの部品が独特な形状をしています。その複雑な組み合わせによって人の心に響く音色が決まります。しかし、その音色がどのように決まるのかについて工学的な知見は多くはありません。そこで、本研究室では沖縄の伝統楽器である三線を対象に音色の決定要因を工学的な見地から検討しています。

主な取組は以下の通りです。

先端超音波技術を用いた機能性材料の特性評価

超音波や光計測技術は、材料に損傷を与えることなくその特性を評価できる非破壊検査技術であり、当研究室では、レーザ超音波、空中超音波、光ファイバセンサといった先端超音波技術を使った材料評価技術を独自に開発してきました。
最近では、接着や接合界面の密着状態の評価法の検討を中心に研究を進めています。その研究では、レーザスポレーション法やZero-group velocity ラム波、界面波といった新しい技術を用いて評価を行っています。

さらに、ストロボ光弾性可視化装置や数値計算を用いることで対象とするラム波や界面波の波動伝搬の可視化によって詳細な波動伝搬の挙動の評価を行っています。

左:開発した高温レーザスポレーション装置、右:光弾性可視化法による接着良好・不良材での板波(ラム波)伝搬の様子

アコースティックエミッション法による材料および構造の健全性診断

応力を受けている部材は、様々な現象によって損傷し、大きな事故につながります。微小な損傷をリアルタイムで評価できれば、大きな事故を予知し、未然に防ぐことが可能となります。また、微小な損傷の蓄積過程を評価することで損傷プロセスや破損形態を予測できます。

そのため当研究室では材料内に微細な損傷ができる際に発生する超音波を検知し、その損傷位置や規模、破壊形態の推定が可能なアコースティックエミッション(AE)法による健全性診断技術の開発を行っています。炭素繊維複合材の損傷過程の評価では大量なAEデータが取得でき、ニューラルネットワークなどによる機械学習によってAEデータの特徴を評価・分類する手法の検討を行っています。

左:炭素繊維強化複合材料の損傷時に発生するAE信号、右:自己組織化マップ法によって得られたAE信号の特徴量分布

音響試験および数値解析による弦楽器の発音機構の解明

世の中には数多くの楽器が存在し、それらは近年までは楽器職人が長年培ってきた経験と知識で最適な形状を試行錯誤し製作してきましたが、現在では科学的根拠に基づいて発音機構を解明し、より良い楽器の形状の提案や豊かな表現力を持つ楽器の開発を行うことが注目されています。

本研究室では沖縄の伝統楽器である三線を対象に研究を行っています。昔から三線は「棹」が命であり音色に影響を与える主要因であると考えられていますが、一般的に弦楽器では弦や響板が音色を決定する主要因であるとされています。

そこで本研究室では「棹」の振動を詳細に解析し、棹が音色に与える影響を検証した上で三線の発音機構を総合的に解明することを目的としています。マイクや加速度ピックアップなど各種センサによる計測により、三線音/棹の振動/弦振動を同時に計測し、棹の影響を評価しています。また、有限要素法解析(FEM)を用いて楽器の振動現象を可視化し、楽器全体の連成振動および音響放射への影響を評価しています。

左:三線音と棹の振動の時間波形及び周波数応答、右:FEMによる共鳴胴内部の音圧分布の可視化

研究者情報

教授:長 秀雄
学位 博士(工学)
所属学会 日本機械学会、非破壊検査協会、材料科学会など
研究分野 非破壊評価、弾性波動解析
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助教:西宮康冶朗
学位 博士(工学)
所属学会 日本音響学会、日本機械学会、非破壊検査協会、IEEE
研究分野 音楽音響、超音波計測
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