長谷川美貴教授(理工学部 化学・生命科学科)が、日本希土類学会において、「令和5年度日本希土類学会賞(塩川賞)」を受賞しました。日本希土類学会賞(塩川賞)は、日本希土類学会初代会長 塩川二朗氏により設立され、優れた研究を行うとともに、日本希土類学会の諸活動に対して特に貢献された研究者に授与されます。
今回、長谷川教授の研究業績『発光機能開拓を志向し希土類イオンの電子状態を生かした一連の螺旋型錯体の開発とスペクトル解釈』が評価され、栄誉ある受賞に至りました。
研究内容の説明
レアアースは15種の元素の総称で、夜光塗料、お札やパスポートの偽造防止セキュリティインク、病院のMRIの超強力な磁石、火災報知器内のセンサ、スマホの方位磁針などで使われています。長谷川研究室では、自然界の森羅万象を分子の虫眼鏡で観察して解き明かすことを目的に、日々学生と研究に勤しんでいます。今は当たり前にある液晶も発見されてから100年後に実用化されました。これを例にすると、現在の研究は特にレアアースを使って光る材料の開発をしながら光るための仕組みを見つけ出す段階でもあります。そのために新たな分子設定と発光の詳しい測定に着手しています。今回の受賞は、分子の形を螺旋にしたことがきっかけでした。これにより、光が円を描きながら進んだり、生体にも安全な光る薬剤になったり、螺旋を繋げて250度でも耐熱性をもつようにさせたり、多様な性質を自在にできることを実験で証明しました。いずれも論文で発表するような段階で、新しいモノづくりや特許取得等実用化はまだまだ先で、新しい仕組みの発見、という位置付けですが、液晶のように、100年後に人々の生活を一気に変えるSomethingになる可能性を秘めた萌芽的な魅力ある研究課題です。
2023年5月30日(火)に第39回希土類討論会の開催とともに授賞式が、そして5月31日(水)には受賞講演が札幌コンベンションセンターで行われました。長谷川教授は、優れた研究を行った42才以下の研究者に贈られる、同学会の「平成23年度日本希土類学会賞(足立賞)」も受賞しています。
長谷川教授からの受賞コメント
日本希土類学会(塩川賞)という、希土類を扱っている研究者にとって大変栄誉ある賞を受賞することになり、身の引き締まる思いです。希土類の研究を続けてきた25年間に携わったすべての共同研究者、学生の皆さん、お世話になった方々との共同受賞でもあると認識しており、心から皆様に感謝いたしております。今後は、この成果を基軸に、新たなエネルギー変換能力を示す希土類分子の開発に取り組んでいきたいと思っております。青山学院大学から新たな光を発出できるよう、一層集中して研究をしてまいります。また、今年の若手研究者への奨励賞(足立賞)は、長谷川研究室の1期生である石井あゆみ先生(現早稲田大学准教授)が受賞されました。私も青山学院大学の卒業生ですので、恩師 星敏彦名誉教授、小野 勲名誉教授にもよいご報告をすることができました。