前田研究室
指導教員 | 前田はるか 教授 北野健太 助教 |
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テーマ | 原子・分子・光物理に関する実験研究 1.リュードベリ原子波束の研究:量子論と古典論の対応 2.冷却リュードベリ原子ガスの研究:新しい量子多体物質 3.ヨーク超蛍光(超放射)の研究:量子多体系の超高速非線形光学現象の理解と新しい光の創成 |
研究内容
本研究室では原子・分子・光物理分野に関する実験研究を行っています。ここでは原子(分子)を最も簡単な物質の単位と考え、物質と光(電磁波)との高速且つ非線形な相互作用に関する様々な原理的テーマを扱います。
本研究室の特筆すべき一大特色は、高いエネルギー状態に励起された巨大な原子=リュードべリ(Rydberg)原子を一つのキーワードとし、主に、この原子の持つ特異で極端な物理性質を巧みに利用して様々な実験研究を行うことにあります。以下、当研究室にて精力的に取り扱っているテーマの幾つかを簡単に紹介します。
リュードベリ原子波束の研究:量子論と古典論の対応
リュードベリ原子はその巨大さ故に量子力学的な性質のみならず古典的な性質の両方を兼ね備えるといった特徴を持ちます。これは、リュードべリ原子が量子論と古典論の対応原理を研究する上で格好の対象の一つであることを意味します。図1は原子核(イオン芯)を中心とする円形の軌道上を電子が周回運動する、いわゆるリュードベリ原子波束のスナップショットを示したシミュレーション結果です。これはボーアが前期量子論にて提唱されたボーア原子に相当します。本研究室ではこの種のリュードベリ原子波束を研究対象としています。
冷却リュードベリ原子ガスの研究:新しい量子多体物質
リュードべリ原子は、自由な空間に孤立して存在する“単一系”として振舞うのみならず、それを極低温までレーザー冷却することで隣接する原子同士が互いに作用を及ぼしあう“多体系”として振舞う特質があり、この冷却リュードベリ原子は原子分子物理やプラズマ物理と凝縮系物理の架け橋となる“新しいメゾスコピック物質”として注目されています。
この“新物質”には量子コンピュータや量子情報処理、一光子光源等に関わる新しい量子デバイスとしての利用の可能性が示唆されています。今後の展開が大いに期待されるテーマでしょう。図2 は150 μK(マイクロケルビン)程度まで極低温にレーザー冷却されたRb(ルビジウム)リュードベリ原子ガスを生成するための磁気光学トラップと呼ばれる実験装置、図 3 はトラップされた冷却 Rb 原子を“撮影”したものです。
ヨーク超蛍光(超放射)の研究:量子多体系の超高速非線形光学現象の理解と新しい光の創成
例えばレーザーなどを用いて励起した原子集団中の個々の励起原子が自然放出によって緩和すると、その際に放出された光を介して励起原子集団の一部に巨視的な遷移双極子モーメントが自発的に形成され、その結果コヒーレント高強度パルス光が放出されます(図4)。これは超蛍光(放射)と呼ばれ、輻射(放射)場を介した量子多体現象であり、1954 年にDickeによる論文が発表されてから現在に至るまで長い間研究されて来た背景を持ちます。しかるに近年、超短パルスレーザーが励起光源として利用できる様になった帰結として、ヨーク超蛍光現象と呼ばれる極めて高速且つ非線形な光学現象が新たに見出されました(図4)。
通常の超蛍光と比較してより指向性の優れた短パルス光が発生するなどの特徴があり、新しい種類のコヒーレント光源としての利用の可能性が強く示唆されています。図 5 は最近研究室で観測された極めて特徴的なヨーク超蛍光のドーナツ型ビームプロファイル((a), (b))及びそのシミュレーション結果((c), (d))です。
研究者情報
教授:前田はるか | |
学位 | 博士(工学) |
所属学会 | 日本物理学会・日本分光学会・米国物理学会 |
研究分野 | 原子・分子・光物理実験、リュードベリ原子、量子制御 |
助教:北野健太 | |
学位 | 博士(理学) |
所属学会 | 応用物理学会 |
研究分野 | 超高速レーザー分光、超蛍光(超放射)、量子制御 |